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自分史 最終編 [自分史]

        

いよいよ自分史シリーズも今日で終わりです。ずいぶん長くかかってしまった。

●会社員時代 そして今へ
30社も受けてたった1社だけ受かり、ウンもスンもなく入った会社だったが、その割にはどうも自分の真実の「らしさ」が発揮できる実はとても相性のいい会社だったようで、こればっかりは本当にラッキーだったと思う。
会社員になってからは色々な事がバランス良く回り出してとても恵まれていたが、今思えば最も私にとって貴重だったことは、それまでの人生では1人として出会えなかった、『音楽で一緒に共感して手に手を取り合える人』 に初めて出会えたことだと思う。

その最初にして最大の人は同期の1人の男子だったが、音楽の趣味が合ったというよりも、彼の守備範囲のほんの2-3%が私の守備範囲のほぼ全般をカバーしていたという感じで、すなわち私よりずっと高いステージに居ながら、懇切丁寧に奥行きある音楽世界に私を指南してくれる誠にありがたい人だったのだ。

『Still Life』しか聴いた事がなかった Pat Metheny の奥深い世界に私をいざなってくれたのも彼である。彼自身はフュージョン系ギタリストだったが、ジャズ、ロック、ポップスなど国内外問わずかなり幅広く色々聴いていて、持っているCDの山が一人暮らしの寮の部屋を完全に埋め尽くしていて寝る場所もないくらいだった。
そんな中から彼はありがたいことに、オススメのCDを4-5枚ずつピックアップしては、解説まで丁寧に手書きでしたためて定期的に私に貸してくれた。
基本的に私は、「人の薦めには従う(=口コミに弱い)」従順なところがあり、第一かつて誰も私に強く「これを聴いてみろ、スゴイぞ」なんておせっかいにも熱く語ってくれる、かつ趣味レベルの高い人なんて全く居なかったので「これは絶対にいいんだ。最後の曲で絶対泣くぞ。」なんて言われると、「うわっ本当だ。スゴイ。ジ~ン・・・」なんていちいち素直に感動していた。

彼のエライところは、Steely Dan の音楽性なんかを熱く語る一方で、つい昨日発売の正体不明の英国ポップバンドのアルバムなんかも迷わず買ってみて、ちゃんと良いところが見つけられるというキャパの広さというか、よけいな敷居を設けないようなところである。
私も俗っぽい部分も多分に持ち合わせているので、彼が私に提供するセレクションは、どれもだいたい自分のストライクゾーンに入った。

例えばPat Metheny の Falcon and the Snowman なんかは、かなりの駄作映画のサントラ盤らしいのだが(私は映画を見てない)、その映画の内容のひどさ(ワケわからなさ)に対してパットとライルメイズの取り組みの無意味なまでの真摯さ、味わいみたいなのを切々と大学ノートに書いてラフに破り取り、CDやテープに必ず添えてくれる。彼は映画もよく見ているし、heavyなまでの読書家でもあるので、その洞察は哲学的ですらあり私はいつも真剣に読んで、聴いた。
また、実際に彼とは相当数、一緒に色々なライブに行ったりもした。今まで全く近づいたことがなかったチック・コリアを教えてくれたのも彼である。

ところで、ここまで書くと私と彼は恋人だったかのようである。
でも全然違った。
少なくとも私には彼に対する尊敬と信頼の気持ちはあふれるほどにあれど、そういう甘い気持ちは微塵も持っていなかった。彼のほうはもしかすると違ったのかもしれないが、でも一度も告白めいたことを
言われたこともないし、お互いの個人的なことを話題にしたこともほとんどなかった。
(だいたい、その頃も私には平行して必ず彼氏がいた。もちろんそれを彼に言ったこともないが)

今考えても、ああいう関係もあるもんなんだなあと思う。
しかし・・・・・・・あの優しさをちゃんと心で受け止め、具体的に気持ちとして返すのが実は私の役目であり、彼も本当はそれを望んでいたのではないか?と今では心の隅で思ったりする。
いや、その時も少し気付いていたのかもしれない。私もずるかった。

そういう意味では、よく「恋愛と結婚はベツモノ」なんていう言い方をするけれども
恋愛と趣味もまたベツモノ、と私も割り切っていたのかもしれない。

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