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Earth, Wind & Fire Ⅲ ~太陽神とあの日の風景~ [洋楽]

            

こうなってくると、アースでさらにもう1本書くのは、しつこい以外の何物でもないが(なにぶんにも
音楽的ボキャブラリーが少ないので、スゴイ!スゴイ!と騒ぐばかり・・・)、ブログを書くために
立て続けにアースを聴いていたら、頭の中がすっかりアース脳?になってしまって、他の音楽が
全て、まったりと刺激が足りないものに感じられてきた。ということで、勢いでさらに今日も。

前回、間違えてうっかり『黙示録』を聴いてしまったおかげで、私の好きなアルバム第3位の
『All'n All』について触れずに終わってしまったので、是非ともこれを。
ちなみに、この邦題は『太陽神』である。これまたどこまでも大げさなぁ~。
しかしこのアルバムも本当にスゴイのだ!(結局この形容詞になってしまう・・・。情けない)
まあ位置付けとしては充分『黙示録』と同じで、ポップ!ファンキー!ダンサブル!で押しまくって
おり、何と言ってもあのスーパーヒットソング『Fantasy』が入っているということで、代表的なアルバ
ムと言わざるをえない。が、このアルバムの魅力は当然それだけではない。
個人的には1曲目の『Serpentine Fire』はあまり好みではないものの、続く『Fantasy』は
やっぱり大好き。最初の2曲で早くも頂点に達しどうなることかと思いきや、そのあとに来る短い
間奏曲がいきなり渋くてグッと来る。ちなみに、このアルバムには、こういった間奏曲(Interlude)
がいくつか配置されていて、コース料理の合間に出てくるリフレッシュメントのソルベ(シャーベット)
のような役割をしているが、どれもなかなかに味わい深い。
最初の『In the Market Place』 などは出色で、まさに目を閉じて聴いていると、織物だの食べ物
だの雑多な露店が延々並び、人や車がゴチャゴチャと行き交う埃っぽい路地を、独り茫然と歩い
ているような気分になる。邦題は「市のたつ広場」らしいが、こればっかりはそうそうゴージャスで
宇宙規模のタイトルはつけようがなかったらしい。
他には、『Brazilian Rhyme』(ブラジルの余韻)というタイトルで間奏曲が2つ。そのうち1つは
ウェイン・ショーターのNative Dancer の1曲目のフレーズである。私は、最初にアースのほうを
聴いていたので、かなりあとになって Native Dancer を初めて聴いた時「あれ?これ聴いたこと
あるメロディだな???」とずっと考え込んだが長いこと思い出せなかった。
ところで、『Brazilian Rhyme』 の邦題が「ブラジルの余韻」であるのは、響きも美しいし、一見、
原題にのっとっている直訳のように思える。が、しかし考えてみてほしい。
Rhymeとは「韻を踏む」という時の「韻」の意味であって、「余韻」とは完全に別物だ。使っている
漢字が同じだけだ。洋楽の訳詞などには、こういう勘違いみたいな訳が結構多い。
ま、でも「ブラジルの余韻」は、妙に雰囲気に合ってるので良しとしますが。

さて、このアルバムで個人的に思い出深いのは 『I'll write a song for you』 である。いや、
『Be Ever Wonderful』もかな。
このアルバムが出た頃、私はまだ小学生で、外で無邪気にドッチボールや警ドロに興じたりピンク
レディーの振り付けを必死で覚えたりそれなりに忙しくしていたのだが、私の兄はちょうど高3で
受験期だった。なので毎晩1時、2時まで1人で起きて勉強をしていた。
新しい広い家に引っ越す前だったので、私は前の家の狭い和室で弟と一緒に2段ベッドに寝て
いたが、たまに深夜に目を覚ますと、アンテナの代わりにフォークが刺さったSONYのラジカセ
から小さな音で(でも夜中にしちゃ、結構大きくてうるさかった)I'll write a song for youや
Be Ever Wonderful や、サンタナの哀愁のヨーロッパなんかが流れていて兄が勉強机の真横の
窓をあけて外を眺めながら煙草を吸ったりしていた。(あれ?高校生なのに・・・)
兄なりに家族への配慮はあったようで、日中はそれこそBoogie Wonderland やミラクルズの
Love Machineなど、流行のディスコナンバーなんかをガンガン流して気合を入れていたが、夜中
は静かにしっとりしたスローバラードを選んでかけていたらしい。
兄は皆が寝静まると、1人でチャルメラを作り(カップラーメンではなく、小鍋で3分煮るやつ)
麺が煮えるのを待つ間、必ず箸で、テーブルの角とどんぶりの端を何かのリズムに乗って交互に
チャンチャン叩いて悦に入っていた。思えば音楽において私が常にギターびいきであったのに対し
兄は完全にパーカッション志向の人だったようだ。怪しげなコンガみたいな打楽器をどこかから
買ってきて、閑さえあればサンタナなんかに合わせて叩きまくっていた。(受験でそんなにヒマは
なかったはずだが) が、そんな兄も、音楽は深く愛好していてもそれを演奏する才能は微塵も
なかったようである。おもえば私もまさにそうだ。

『I'll write a song for you』の後半の高らかなスキャットの辺りなど聴いていると、まざまざと
あの時代のわが家の空気が蘇って来るが、それは、まだ若く溌剌と家庭を切り盛りしていた母の
記憶であり、颯爽とネクタイを締めて頼もしく社会と関わっていた父の記憶であり、そして兄が最も
カッコよく、弟が一番かわいく、私自身の未来も無限に可能性を秘めているかのように見えた
時代の記憶であった。
時は流れ、あの時と同じ家族の姿や風景はもうどこにもないし取り戻しようもないが、あの場所で
聴こえていた音楽だけは、何も変わらず今も耳元で簡単に再現することが出来る。
それは嬉しいことでもあり、何となく切なくもある。
アースのサウンドは私にとって、きわめて美しく爽快で上向きな気分になるゴキゲンな音楽であり
ながら、いつもほんの少しだけだがしんみりしてしまう。これがまた、好きの所以でもある。


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ayumusic

トラックバックしました。下のテキストの操作をまちがってしまいました。ごめんなさい。
E,W&Fの新譜、結構良いです。ぜひ、新譜の記事を書いてください。よろしくお願いします!
by ayumusic (2005-12-07 00:09) 

milk_tea

いつもさかのぼって読んで下さりありがとうございます。
ayumuさんとは趣味が合いますのできっとこのアースの新譜もいいので
しょうね。これって今年の夏か秋くらいに出たやつですよね。
じゃあ買ってみようかなー。情報ありがとうございます!
風邪を引かれたそうで、気をつけてください。
・・という私も、実は今日風邪で会社休みました!(笑) 明日は行きます。
by milk_tea (2005-12-07 00:23) 

福則

milk_teaさん、こんばんは。
ここは1年半くらい空いてますが、

実は『All'n All』、超大好きなアルバムなんです。
さんざん聴いていたのは高校時代ですね。
私のi.Podでは全曲5つ星です。

私はベーシストではありませんが、友達の影響で"Jupiter"のベースを
練習してたような記憶がかすかに残ってます。
当時、友達のベースをお遊びで触っていて、練習していたのが、
これと、あと、Fleetwood Macの『Rumours』に入っていた"Dreams"です。
この曲はベースが間奏以外ほとんど"F"と"G"の2音だけの繰り返しなんです。
不思議です。
お~っとE.W.&F.から外れてしまいましたね。話を戻しましょう。
全曲好きですが、私は基本的にバラード好きなので、
特に"Love's Holiday"、"I'll write a song for you"、"Be Ever onderful"が
好きですね。
バラード以外の曲ではアル・マッケイのギターがカッコ良いです。
"Fantasy"は若い頃、よくカラオケで唄ってました。懐かしい~。
by 福則 (2007-07-27 01:15) 

milk_tea

福則さん!再びありがとうございます。
このあたりの記事は、まだまだ読んでくださる方がほとんど居ない時に孤独に
書き溜めていた頃のものですね。

>実は『All'n All』、超大好きなアルバムなんです。
>さんざん聴いていたのは高校時代ですね。
>私のi.Podでは全曲5つ星です。

私もねぇ、iPODにアースは山ほど入ってるのでしょっちゅう聴いてますが
なんだろう、飽きませんね。このアルバムも本当にいいんですよねー。

>当時、友達のベースをお遊びで触っていて、練習していたのが、
>これと、あと、Fleetwood Macの『Rumours』に入っていた"Dreams"です。

フリートウッドマックは私も数枚聴いていて(そんなに詳しくはない)
でも結構好きです。
それにしても、こういう記憶や体験っていうのはあとあとまで人生の重要な
シーンとして刻まれますよね。友達のベースをいじって弾いたフレーズみたい
なのは死ぬまで手が覚えていたりするし。

>全曲好きですが、私は基本的にバラード好きなので、特に"Love's Holiday"
>"I'll write a song for you"、"Be Ever Wonderful"が

後者2つは私も愛してやまないですね。聴くたび胸が熱いです。
やはり過去の記憶の一コマが重なりますし。
とはいえ、私はアースだったらバラードよりもアップテンポのナンバーのほうが
ずっと好きかな。In the Stone みたいな、鉄壁のように完成されたダンサブル
サウンドに身を任せて陶然とするのが大好きです。

>"Fantasy"は若い頃、よくカラオケで唄ってました。懐かしい~。

なんか、何千回も聴いて「今さら」感の強いファンタジーですけど、でも聴くたび
やたらと感動するんですよね。完成された曲っていうのは、色褪せない感動が
ついて回りますね。私もカラオケいったらよく歌いますよ。今も!
またヨロシクどうぞ~
by milk_tea (2007-07-29 02:18) 

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